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AI × Privacy Law

改正個人情報保護法(2026年成立)とAI学習

最終更新: 2026-07-18(数値・事実は出典元の公表情報にもとづきます)

個人情報保護法の大規模改正が2026年7月に可決・成立し、7月17日に公布されました。柱は「AI活用にも資するデータ利活用の促進」と「違反への抑止力強化」の両面。AI学習のための同意ルールはどう変わり、企業のAI導入——つまりFDEの実務——には何が効いてくるのか。個人情報保護委員会の一次資料をもとに整理します。

30秒でわかる改正のポイント

統計作成等にのみ使うなら、個人データの第三者提供・公開要配慮個人情報の取得に本人同意が不要になる——概要資料は「統計作成等であると整理できるAI開発等を含む」と明記。 一方で、顔特徴データ等の生体情報・16歳未満のデータは規律が強化され、課徴金制度も新設。促進と規制強化がセットの改正です。施行は公布(2026年7月17日)から2年以内。

何が起きたか: タイムラインと全体像

時期出来事
2025年6月13日「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」閣議決定(改正の土台)
2026年4月7日改正法案を閣議決定(個人情報保護委員会が概要を公表)
2026年7月10日参議院本会議で可決・成立(報道各社)
2026年7月17日公布(個人情報保護委員会が公表)
施行原則として公布から2年を超えない範囲内で政令で定める日(〜2028年7月頃まで)

改正の趣旨は、個人の権利利益の保護と「AI活用にも資する円滑なデータ連携の促進」の両立です(概要資料の明文)。つまり「AIのための緩和」と「リスクへの規律強化」が同じ法律に同居しており、AI導入に関わるエンジニアはどちらの面も知っておく必要があります。

AI学習に効く改正①: 統計作成等特例(同意不要化)

AI学習との関係で最大の変更が、統計作成等特例(改正法第30条の2・第31条の3)です。

  • 個人データ等の第三者提供と、公開されている要配慮個人情報(病歴・犯罪歴等のセンシティブ情報)の取得について
  • 統計情報等の作成にのみ利用される場合は、本人同意が不要になる
  • 概要資料の注記に「※ 統計作成等であると整理できるAI開発等を含む」と明記

従来、要配慮個人情報の取得には原則として本人同意が必要で、これが機械学習用データセットの構築における大きな制約でした。改正後は「統計作成等と整理できるAI開発」であれば、この同意ハードルが下がることになります。ただし、どのようなAI開発がこの特例に該当するかの具体的な線引きは今後のガイドライン等で示される見込みで、ここが実務上の最大の注目点です。学習済みモデルからの個人情報の復元可能性など、論点は残っています。

あわせて、取得の状況からみて本人の意思に反しないことが明らかな取扱いの同意不要化、学術研究例外への医療機関の明示的な追加など、利活用側の緩和が複数入っています。

AI学習に効く改正②: 強化される側の規律

緩和だけではありません。AI導入の現場に直接効く「強化」も多く含まれます。

規律内容AI実務への含意
特定の生体データ顔特徴データ等の取扱いの周知義務化・利用停止等請求の緩和・オプトアウト提供の禁止顔認証・音声認識系のユースケースは要件が厳格化
16歳未満同意取得・通知は法定代理人を対象と明文化。本人の最善の利益を優先する責務規定未成年データを含む学習・分析の設計に影響
不適正利用の禁止拡大個人情報でなくても「特定の個人への働きかけが可能な情報」の不適正利用・不正取得を禁止ターゲティング的な利用は識別子ベースでも規制対象に
課徴金制度の新設重大な違反により得られた財産的利益等に相当する額の納付命令(第148条の3〜17)大量の個人データを扱うAI基盤の違反コストが金銭的に顕在化
罰則強化データベース不正提供等の法定刑引き上げ・詐欺的取得への罰則新設データ調達の適法性確認(データの出所デューデリ)の重要性が上昇

FDEの実務にどう効くか

FDEは顧客企業のデータを使ってAIを導入する仕事です。この改正は、FDEの要件定義・設計の論点を直接動かします。

  • 学習利用の法的整理が要件定義の項目になる: 顧客データをモデル学習・統計分析に使う設計では「統計作成等特例に整理できるか」が新しい検討軸になります。この整理を顧客の法務と協働して行える人材は希少です(要件の言語化規制業界の制約理解
  • 生体・未成年データを含むユースケースの設計厳格化: 顔認証・店舗分析・教育系のプロジェクトでは、強化側の規律がそのまま設計制約になります
  • 課徴金時代のコンプライアンス設計: 漏えい・不適正利用の金銭的リスクが明確になったことで、アクセス制御・監査ログ・評価体制(評価・テスト設計クラウド基盤とデータパイプライン)の価値が上がります
  • 施行までの2年が準備期間: 政令・ガイドラインの公表を追いかけ、顧客に「何が変わるか」を翻訳して伝えること自体がFDEの提供価値になります(経営層向け報告

出典(一次情報・2026年7月18日確認)

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。条文の解釈・個別の実務判断は、施行までに公表される政令・規則・ガイドラインをご確認の上、弁護士等の専門家にご相談ください。成立日(2026年7月10日)は報道各社の報道に基づきます。

よくある質問

改正個人情報保護法はいつ成立・施行されますか?

2026年4月7日に改正法案が閣議決定され、通常国会での審議を経て2026年7月10日に参議院本会議で可決・成立と報じられ、2026年7月17日に公布されました(個人情報保護委員会公表)。施行は「原則として公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、遅くとも2028年7月頃までに施行される見込みです。具体的な施行日と細則(政令・規則・ガイドライン)は今後定められます。

AI学習のためのデータ利用はどう変わりますか?

最大の変更は「統計作成等特例」(改正法第30条の2・第31条の3)です。個人データ等の第三者提供と、公開されている要配慮個人情報の取得について、統計情報等の作成にのみ利用される場合は本人同意が不要になります。個人情報保護委員会の概要資料は、この「統計作成等」に『統計作成等であると整理できるAI開発等を含む』と明記しており、一定のAI開発・学習がこの特例の対象になり得ます。ただし、どのようなAI開発が「統計作成等と整理できる」かの具体的な線引きは、今後のガイドライン等で示される見込みです。

どんなAI学習でも同意不要になるのですか?

いいえ。特例の対象は「統計情報等の作成にのみ利用される場合」に限られます。特定の個人への働きかけや個人単位の判断に使う利用は対象外と考えられ、また顔特徴データ等の特定の生体データにはむしろ規律が強化されます(周知の義務化・オプトアウト提供の禁止など)。16歳未満の本人については法定代理人の同意が明文化されるなど、保護が強まる領域も多い改正です。個別の設計判断は施行までに出る政令・ガイドラインの確認が必須です。

企業のAI導入(FDEの実務)には何が効いてきますか?

①顧客企業のデータをAI学習・統計分析に使う際の同意設計が変わる可能性(統計作成等特例の適用可否の整理が新しい論点になる)、②顔認証等の生体データを扱うユースケースの要件厳格化、③課徴金制度の導入により、大量の個人データを扱うAI基盤でのコンプライアンス設計の重要性が上がる、の3点が大きいと考えられます。導入プロジェクトの要件定義段階でデータの法的整理を行う役割は、FDEの価値がさらに高まる領域です。

この記事の情報源は何ですか?

個人情報保護委員会の公表資料(2026年4月7日の閣議決定時の法律案概要PDF、2026年7月17日の公布に関する公表ページ)を一次情報として参照し、成立日については報道各社の報道に基づいています(いずれも2026年7月18日確認)。本記事は一般的な情報提供であり法的助言ではありません。実務判断は施行までに公表される政令・規則・ガイドラインと、専門家への相談の上で行ってください。

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